2016年 04月 01日
円形の庭のある家(追分の山荘)改修工事に立ち会いました。 |
1991年に竣工した僕の処女作「追分の山荘」は早25年の歳月が経過しましたが、2階のベランダや庭から突き出たデッキなどの雨掛かりの木部はさすがに傷みが出てきました。昨年秋から補修工事に入っていましたが、冬期間の積雪で中断していた工事も温かくなり再開されたので、昨日工事の確認に足を運びました。 駐車場に立つと、くの字に折れた軽やかな屋根と、手前側にぐっと突き出したベランダが訪問者を迎えてくれます。外壁は板張り、内部は全て土塗り仕上げの家です。建物は北西方向に正面を向けた細長いプランで、駐車場から見ると建物の左側にはリビングから連続する円形の庭が広がっています。玄関へは右に曲がって建物の裏側を通って行きます。 弓形の居間と庭が一つの円弧に納まるように計画しています。居間から眺める庭は北西の方向にあり、室内からは木漏れ日の落ちる庭を眺めることができます。竣工直後、居間と庭の関係を舞台と客席に例えて「舞台としての建築」として発表しています。外壁のレッドシダーは25年の歳月の中で色もあせ、むらも出て、竣工当時より今の方が豊かな表情を見せています。 玄関に立つと、視線は円形の庭に舞台の花道のようにニョキっと突き出たデッキに抜けます。左の質量のある壁は、庭の円弧の軌跡がそのまま室内に延長された位置に立ち上がったもので、土が荒く塗られ、厚さは30cm程あります。
庭から見て居間の背面に位置するこの土壁には少し赤い顔料を入れ、藁の袴の柔らかい部分が塗り込まれました。25年の歳月の中で土壁にはアクも出て、実に複雑な表情になりました。 この家の内部の仕上げは全て土を塗って仕上げています。淡路出身の久住親方が全国の腕利き左官を集めて結成した「花咲か団」の手による仕事です。左官工事は2期に分けて行われました。1期目は全てに淡路の浅葱色(あさぎいろ)の中塗り土をざっくりと塗り、2期目はキッチンカウンターや洗面カウンターなどの水掛かり箇所や居間の背面の湾曲壁の仕上げ工事などを行っています。意匠的な理由で部分的に塗った表現のための土壁ではなく、家中全てに渡って土を塗った空間に包まれる居心地は、この家の大きな特色です。その空気感の気持ちの良さは写真で紹介するのが難しく、中々言葉にもできませんが・・・。
この現場で知り合った左官屋さん達との繋がりが、その後の僕の仕事のクオリティーに大きく影響しています。
HP「追分の山荘」
庭から見て居間の背面に位置するこの土壁には少し赤い顔料を入れ、藁の袴の柔らかい部分が塗り込まれました。25年の歳月の中で土壁にはアクも出て、実に複雑な表情になりました。
この現場で知り合った左官屋さん達との繋がりが、その後の僕の仕事のクオリティーに大きく影響しています。
HP「追分の山荘」
by ito-kan
| 2016-04-01 13:25